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森と人

フォレストマントル上鹿川 西京子さん | 美しい森を次世代へ

僕らの店で”宮崎県の山や山間部について情報をお客様に伝えていこう”と、そんな想いを真っ先に電話で報告させていただいたのが、宮崎県延岡市の奥地に位置する上鹿川(かみししがわ)というエリアにお住まいの西京子さん。
上鹿川というエリアは鉾岳をはじめとした岩峰の美しい山々や、鹿川渓谷などの美しい渓谷などが存在し、ハイキング・トラウトフィッシング・クライミング・シャワークライミングと様々なアクティビティが楽しめるエリアで、年間を通して僕らもよく出かけるエリア。

このサイトで一番最初に僕らが紹介したかった方が、このエリアで森林保全の活動を行われている西京子さん。僕が”京子さん”と呼ばせていただいているので、以降”京子さん”と書かせていただきますが、このエリアで山を歩いた後や渓谷で釣りをした後に、よく突然電話をかけて「今近くにいるんですが、遊びに行ってもいいですか?」なんて、図々しくご自宅にお邪魔してしまう僕を、いつも温かく迎えてくださって珈琲を飲みながら森の話をしたり、一緒に野鳥を眺めていたりすることが、僕がこのエリアを訪れた時の習慣です。

雨の山間部を歩いた後に森の話を

今回、京子さんと話をするため早朝に宮崎市を出発して、ご自宅にお邪魔する前に少し上鹿川をブラリ。基本的に晴れた日に山間部に出かけることが多いのですが今回は雨。そんな中の風景もとても美しいものですが、2月中旬というのにウグイスが鳴いており、集落にはたくさんの花。今年は春の訪れが早いなぁと実感します。

僕らの店で”自然や環境の話を伝えていこう”という話は以前に伝えており、今回お邪魔した際に改めてその旨を伝えると「また、あんたは大変なことを始めてしまったなぁ…でも、ありがとう」と、素敵な笑顔でそんな言葉をかけてくださいまして「そうやって『ありがとう』って言ってくださる方がいるから頑張るんです」と僕が素直に本音を話せるのも京子さんとの会話での嬉しいポイント。

そして「遠いところありがとう」と、薪ストーブに火を入れた暖かい部屋で焼きたての餅と珈琲をいただきながら、この家に住む大好きな猫と戯れあって、お互いが好きな森の話に花を咲かせます。

子を守るような自然の守り方

僕が”環境について”と話を切り出すと「環境なんてそんな固いものじゃないよ」と森の話をしてくださるのですが、京子さんの自然や森への考え方は学術的な”環境とは”ということではなく、木々との対話やコミュニケーションを大切にし、純粋に”美しいものを大切にしたい”という気持ちや、”枯れた木の姿を見ると悲しくなる”という、頭で考えつつも心で感じるものに対して動かれているような印象を受けて惹かれてしまいます。

そして山間部の自然や環境のことを伺うと「あんたは分かっとるやろ」と言いつつも、様々な現状の話などを改めて語ってくださいます。

上の画像は提供いただいた森の画像ですが、美しい原生林の森で木々が倒れてしまっている光景。
「人と同じで支え合うものがなければ木も枯れてしまったり、倒れてしまったりするもの」と話しながら、鹿が下草や若い木を食べてしまって乾いた土に生える木々は、支えてくれるものがなくなって倒れてしまうので、”私たちが寄り添って支え合う木々を育てていきたい”と森の保護を行う気持ちを教えてくださいます。

反面、椎茸栽培を例に麓に暮らす方々のことも話してくださいましたが
一生懸命に育てたものがある日鹿に食べられてしまう → それでもめげずに試行錯誤しながらチャレンジする → それでもまた食べられてダメになってしまう。
森にたくさん入る時間的余裕もない中で、そんな鹿とのやりとりを繰り返していると、どこかで心が折れてしまい、もう続けられなくなってしまう。そんな現状もたくさん見てきたと教えていただき、自然も人も支え合うもの同士の大切さを伝えていただきます。

そして上の写真も同じくご提供いただいた画像ですが、九州本土ではこのエリアだけと言われている天然杉のひとつ。
長い間ここで育つ貴重な天然杉に支え合うものが居ない光景を見て「私たちが寄り添って支えるからね」と対話し、天然杉周辺の植物が食べられてしまわないようにネットを張って、定期的な調査を行うことで「今では少しずつ私たちと同じくらいの背の木々が増えてきたの」と誇らしげに活動やその成果を教えてくれ「まるで子を守るような、または家族を守るような感覚で自然と付き合っているのかな」と、そんな気持ちをいつも感じます。

地域やボランティアの方々と

提供いただいた上の画像は、森を守るために鹿避けネットを設置している、地域の方々とボランティアの方々。ネットを境として下草の違いが非常に分かりやすいものだと思いますが、京子さんにとっては、こうして様々な活動を行う方々も家族同然なんだろうなと感じることがあります。そしてそんな京子さんを慕って多くの方がボランティアに参加したり、手伝いを行うようになっているのも、この地域の素敵なところ。

高齢化と新しい環境保全の形

京子さんの話は、書けばキリがないほどに続けられるので今回はこの辺にしておきますが、京子さんが僕ら店を営む者とのコミュニケーションも欠かさないのは”僕らを介して森に関わる方々を増やすため”でもあります。店を介して新たに自然を楽しむ方々が、色々な森の楽しみ方や多様性を知り、大好きな森に関わってくれる方が増えてほしいと願い、それを心底嬉しいと喜んでくださるため、僕らもそれを汲み取って地域の方々との交流機会を作ったり、自然の楽しみ方を伝えることで自然を楽しむ方や、様々な楽しみを感じていただける方が増えるように努めています。
こうして”どうやって森に関わる人が増えるか”・”どうすればそんな方々が喜んでくれるか”という中で、地域の店(企業)と連携して、協力しあう中でも解決していこうという常に人に見えないところで考えて試行錯誤してというのを感じるだけに、僕らやお客様にもその熱意や情愛というものがいつも伝わります。

上の写真は、京子さんらが大切にしている上鹿川の森で、お客様との交流イベントを行った際の一コマですが、アウトドアを楽しむ方々も、自然に関わる方々との繋がりを持つことや、森の面白さを知ることで、単に歩くだけでなく様々な楽しみを知って喜んでくださいます。そうして様々なイベントなどを企画したり、情報の発信を考えることで、美しい森を子の世代、そして孫の世代、さらにはずっと繋いでいかねばならないと、蔭で奮闘されているのを僕らも知っているが故に定期的にお邪魔して、ご馳走をいただきながら未来の森の姿を夢見て盛り上がりつつ、何か力になれれば嬉しいなといつも思うのです。

僕らは主に整備された登山道を歩いてハイキングを楽しみ、様々な森の姿を見て感動してリフレッシュしますが、多くの自然や環境は蔭で誰かが守る活動を行っています。そして上鹿川をはじめ多くの山間部は”高齢化”や”過疎化”によって、道の整備や森の保護を行う方々が日々減っています。
上鹿川では希少な植生などがあり、今後は新しい自然保護の形として大学の研究フィールドや行政の参加、また祖母傾ユネスコエコパークとして様々な団体が共同で調査・研究・保全活動を行う形が見え始め、そうした経緯を見てますと京子さんの想いが新しい形で未来に継がれていくことを感じ、なんと頼もしい存在なんだと驚きます。

先日京子さんと話していた中で、上鹿川には天然杉や固有種など希少なものが存在しているが故にという点はあるが、様々な地域に”気づいていないだけ”の貴重なもの、大切にすべきものが存在しており、改めてそうしたものを見つめて後世に残していくべきだという話をしていました。
それは時に自然や動植物であり、時に建築物であり、時に伝統文化であり、そして人の想いであり、そうしたものをいつまでも大切にしていけると良いねと「お互い頑張ろう!」なんて話に盛り上がったのであります。

気づけば6時間、京子さんの自宅で森の話を色々とさせていただいていましたが、いつもお邪魔するとこんな感じです…

自然や環境と言うと、どこか固く難しいイメージを持ってしまいますが、様々な地域で自然に関わる方々と、自然の中を歩いて楽しむ僕らが繋がって、未来の森を考えることは生活習慣が変わった現代において、これからの森との関わり方を見つける可能性がたくさんあるといつも感じます。時に楽しみよりも真剣なことがあるかもしれませんが、引き続きお客様と共に地域の方々と楽しみ、美しい森を次世代へ繋いで行けたら「なんと素敵なことだろう」と夢見て5-6年。「あんたもようやるわ」と京子さんによく言われるのでありました。

この地域の魅力や物語はまだまだありますので、また折りを見て更新いたします。
京子さん、素敵な時間をありがとうございました。


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