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森の環境

鹿と森 | 地域の環境に強い関心を持ったきっかけ

宮崎県の森の環境について様々な方に話を伺ってきましたが、そんな中で必ずと言っていいほど話題に上がるのは野生の鹿の話。そして、僕らが宮崎県の森の環境変化について、様々な方に話を伺うきっかけとなったのも野生の鹿です。

先日、増えてしまった鹿の食害などについて少しだけ書かせていただきましたが、昨今では山や山間部を歩いていて野生の鹿に会うことは珍しいことではなく、多くの方が山や山間部で野生の鹿を見かけたことがあると思います。

僕ら自身も山や山間部に関わる仕事や遊びをしているため、アウトドアの仕事に携わる前から鹿の問題などは知っており、自分で店を持つようになってからは書籍を読んだり、山で実際の変化を見たりで”ある程度”は知っているつもりでいました。

鹿を通して様々な方に会うように

僕らが地域(宮崎県)の環境の変化などについて、様々な方に話を聞くようになったきっかけは鹿だと前述しましたが、それは4年弱前の話にさかのぼります。
釣りを楽しむ顔馴染みのお客様から「中野くん(店主)、最近⚪︎⚪︎川に行った?」との質問をいただき、最近は行っていない旨を伝えると「鹿がエライことになっている」と話してくださいまして、定休日にスタッフと共にその川へ向かった時のこと。

渓谷の入り口にトラックほどの穴が掘られており、その中には無数の鹿の亡骸。そしてそれらは”人に食べられることなく”駆除された鹿たちでした。

それらの中には新しい亡骸もあれば、時間が経過してしまっているものもあり、もちろん腐敗し始めているものも。その光景に言葉を失いながら林道を歩いて登っていくと、途中には無数の”罠に注意”の印。そして時折、林道沿いには罠にかかった小さな鹿が僕らを見ながら叫んでおり、それは決して「助けて」という叫びではなく、僕らを見て逃げたいが罠にかかって逃げることができずに、暴れながら叫んでいる訳です。

猟師の知人もいることから、そうした鹿を救う訳にもいかず「ごめんね」と思いながら林道を上り、軽トラックとすれ違った後に帰路についた頃には罠にかかった鹿は姿ないものとなっていました。

獣害駆除については、以前から様々な方から話は伺っていたものの、僕らがこれまでに話を聞いてきた方は命あるものへの敬意を持ち、責任を持って食べることであったり、動物に対する敬意であったり、昔から守り続ける文化や言い伝えを守る方々ばかりで、食べられることなく穴に葬られた鹿を見た時に「さすがにこれはないだろう」と、当該の地域の経験の長い猟師の方にアポイントをいただきお邪魔したのです。

猟師を尋ねて

僕らを温かく迎えてくださったのは猟友会の方。まだ肌寒さのある季節でしたが暖かくした部屋で、猟師の仕事・昔からの慣わし・猟犬の話や命あるものを大切に考え、食べることの大切さや猟の問題や魅力と、様々な話を語ってくださいました。

そんな話を聞かせていただきながら「こんな温かい方々が無惨な鹿の駆除をするのだろうか」と疑問に感じながら、渓谷で見た”鹿の亡骸”について教えてほしいとお願いしたところ、当該のことについては猟友会が行っていることではなく、町の事業として受託した事業主が行っている獣害駆除であり、長く猟を続けてきた猟師の方々の大切にしたいことを真剣に話していただきました。

僕らが仕事を終えた後の遅い時間にお会いした猟師さんは、夜遅くまで狩猟のことを教えてくださって、終わってみれば本当に感謝する時間でしたが、同時に鹿の亡骸の姿を思い出すと何とも言えない気持ちになるのであります。

“知恵が感じられない駆除”ではなく”やむを得ない状況”

情けない話ですが、鹿の亡骸を見た時は「さすがに知恵が無さすぎる」と憤慨した僕らです。
例えば鹿の問題について様々な方に伝えながらジビエ料理を振る舞う方法があるかもしれませんし、例えば何らかのイベントを通して猟師さんらの活動や課題に触れることができるかもしれないと、そんなことを思った僕らですが、冷静に”好んで駆除の仕事をする”方がいるはずもなく”駆除せざるを得ない状況になっている”と考えますと、アウトドアの事業に携わらせていただきつつも、ここまで無知であり、書籍や山を歩いて見て、獣害被害の問題は知っていながらも何も行っていなかったことが、積み重ねられた鹿の亡骸に繋がった可能性もあるなと何らかのアクションに繋げていきたいなと思ったのです。

様々な方にお願いして、様々なイベントを

鹿の亡骸に向き合った後は、様々な活動を行われる方にアポイントをいただいて、貴重な話の数々を聞かせていただきました。
森林保全に向き合う方・天然の杉を保護する方・ブナの森を守ろうと奮闘する方・野生動物の調査を行う方・大学の名誉教授・昆虫調査や植物調査の専門家・美しい河川を守るために奮闘する方・そして登山道の整備を行う方など、店の定休日を活用し様々な町や山に出かけて話を伺い、時に僕らの店や山間部でイベントを行ってきました。

上の写真は、宮崎県延岡市の奥地にある上鹿川というエリアで森に暮らす方々と、森を楽しむお客様とで交流イベントを行った時の一コマですが、森に携わる方々の知識や知恵は、とても素敵で面白いものばかり。そして何より愛情に溢れており、とても感銘を受ける時間です。
また、環境の調査に携わる方に店頭で講義をしていただいたり、時に町役場の方にお越しいただいてマナー問題などに触れたりと、様々な企画を実施させていただく中で、徐々にお客様自身も自分の好きな町の発展のための活動に参加されたり、ボランティアなどで自然保護活動に携わる方も増えてきました。

こうして山や山間部に関わる方と、それを楽しむ方々の繋がりは、僕らも含めて双方に喜びや楽しみが生まれる時間です。

基本楽しみながら、時に一緒に考えて

山を歩いたり、渓谷で釣りをしたりと山間部での時間は、僕らも基本的に”楽しむため”に行っています。だからこそお客様には様々な遊びを目一杯楽しんでリフレッシュいただきたいと常々思っています。
そしてその陰には、登山道・森・渓谷、そして山間部の町を守る方々の存在が居て、時に懸命な活動をされながら楽しむ方々を支えてくださっており、そうした方々の存在を知るだけでも、山や山間部の遊びは興味や関心事が増えて、情愛のようなものが増すものだと感じます。

そして駆除されてしまう野生動物の存在、また「ごめんね」と言葉をかけながら猟を行う方々の存在もあります。
先日も山間部の方と長く電話で話しながら、森のことを色々と語り合っていましたが「誰にも知られることなく活動する方や、誰にも知られることなく駆除されてしまう動物の存在が少しでも改善されるといいね」と、話してくださいました。

様々な場所で、今の時代の”森との関わり方”について話し合いを行うことがありますが、僕らはアウトドアに関わる事業を行う者として、協力くださる様々な方の話を聞かせていただきつつ、お客様と一緒に”楽しみながら”できることを、小さなことから考えていきたいなと、いつも鹿の姿を見るたびに思うのであります。

新たにWEBサイトを作って、自然や森の話に触れさせていただき始め、少しずつではありますが”森のこと”を話してくださる方が増えて、本当に嬉しい限りです。
引き続き多くの方と、楽しみながら、時に一緒に考えて、森に関わる方々や動植物に想いを馳せていきたいと思います。


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