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森と人

霧島ジオパーク推進連絡協議会 図師さん | 霧島の魅力や推進連絡協議会の仕事

宮崎県近郊の山で最も人気の山域といえば”霧島の山”を思い浮かべる方が多いと思います。韓国岳・高千穂峰をはじめ現在でも活動する火山の多い山域である霧島山系は、雲仙・くじゅう・阿蘇・桜島と並んで九州らしい火山帯のひとつで、休日には多くのハイキングを楽しむ方々で賑わいます。

そんな霧島山系で、僕らのようなアウトドアの店を介して、お客様に魅力や楽しみ方、そして火山帯の魅力や安全管理などを知っていただきたいと日々尽力される方がいらっしゃいますが、今回はそんな中のおひとり、霧島ジオパーク推進連絡協議会の図師さんと一緒に、霧島のことを話しながら霧島山系の山を歩いてきました。

余談ですが、宮崎県内の各地に「この人が居るから、このエリアに通ってしまうんだよなぁ」という方が居ます。例えば前回ご紹介させていただいた上鹿川の西京子さん然り。霧島山系では図師さんもそんな存在のおひとり。
そんな方々が共通して仰るのは、山や山間部を楽しむ方に情報を伝えるため、もっとも近い存在の”お店”と協力し合い、大切な情報を伝えていきたいと仰っていただき、山や山間部を訪れる方々の楽しみや安全・そしてお店の役割などということを真剣に考えてくださっています。だから僕らもそうした気持ちを理解して、役に立てるよう努めながら定期的な意見交換などを行わせていただいていますが、要は本当にお客様思いで、自然に対する思いも強く熱い方々なのでありまして、以前におふたりをご紹介したこともあるのです。

霧島ジオパーク推進連絡協議会の仕事について話しながら、中岳中腹探勝路を歩く

今回は改めて”霧島ジオパーク推進連絡協議会”って、そもそも何をしているのかということも含めてお客様に知っていただこうと、打ち合わせを調整いただいたのですが「せっかくなら実際に山も歩きながら話しましょう」と、高千穂河原ビジターセンターを起点として楽しめる”中岳中腹探勝路”を一緒に歩いてきました。こうして担当さん自身も山を歩いて楽しまれる方というのは、親近感や信頼が持てるものです。

そして、上の写真はスタート地点にあるコースの説明版で「こういう看板を設置することも仕事のひとつです」と歩きながら教えてくださいます。(コースの案内板のみでなく、学術的な価値や魅力も伝えていくこと)

植生の再生を見れる中岳の魅力

記憶にある方も多いと思いますが、2011年に大きな噴火のあった新燃岳の風下に位置する中岳は、当時の噴火の影響で植生が破壊されてしまいましたが、時間の経過と共に徐々にその植生も再生しています。「火山と共に暮らす霧島ではずっと火山の影響が生活に存在しており、こうして植生が再生していく様子も記録に残しながら、過去の火山活動・生物の絶滅・氷河期などの移り変わりと様々なものを調べて、未来を考えるのに役立てて行かねばならないのです」と話してくださいます。

そして新燃岳に隣接する中岳の魅力を一緒に楽しみましょうと、新燃岳との距離の違いによる噴石や軽石の大きさの変化を一緒に見ながら、爆発的な噴火を起こした時の火山の強さや危険などを一緒に話して楽しみます。
※新燃岳隣に位置する中岳では、新燃岳に近い距離では噴火によって飛んだ軽石が比較的大きく、距離が離れるごとに小さくなります。

なお、僕は新燃岳を経由する霧島の縦走コースを歩きたいと思っていた矢先に噴火が起きてしまい、新燃岳を経由するコースを歩くことが叶いませんでしたが、図師さんはそんな霧島縦走も噴火前に楽しまれていたおひとり。「もう生きてる間には歩けないでしょうねぇ」なんて言いながら噴火の話に賑わいます。

霧島ジオパーク推進連絡協議会の仕事

図師さんが現在所属されている”霧島ジオパーク推進連絡協議会”とは、そもそも何をしているのかという点につきましては、以下のように教えてくださいました。

行政や民間などの団体が加盟している霧島ジオパーク推進協議会は、現在事務局を霧島市役所内のジオパーク推進課に置いており、ジオパークのシステムに沿って自然・環境・歴史などを守りながら有効活用していくためのあらゆる活動を行っています。
関係団体の意見の取りまとめ役になることもあれば、学術的な調査協力、資源の活用、情報発信、看板などのインフラ整備、ジオパーク内の情報整備や管理など、活動内容は多岐に渡ります。
そうした様々な活動を通して、観光・教育・防災・保全などに繋げていくことを目的とし、様々な団体と意見交換や調整を行いながら、地域の方々の発展や、関係する産業の方々の発展に貢献できるよう努めています。

そして、そもそもジオパークとは何ぞやということも、改めてご説明くださいました。

霧島ジオパークとは

改めて図師さんに”霧島ジオパークとは”という点において教えてくださいました。

そもそもユネスコ世界ジオパークと日本ジオパークネットワークとが存在しており、霧島は2010年に日本ジオパークに認定され2022年にそのエリアを拡大しました。霧島のエリアはユネスコ世界ジオパークに認定されているのではなく、日本ジオパークネットワークに認定されているエリアであり、ユネスコ世界ジオパークの理念に沿って活動を行っています。
なお、霧島ジオパークは2県7自治体(鹿児島県・宮崎県の2県・霧島市、曽於市、湧水町、都城市、小林市、えびの市、高原町)の行政団体のほか、観光・経済団体や地域・まちづくり団体、教育・研究機関及び国・県の関係機関などで構成されており、構成団体と連携を図りながら、地域住民とも協働して事業を推進しています。 

詳細は、霧島ジオパークのWEBサイトにも掲載されていますので、リンクも張っておきます。

なお、ユネスコ世界ジオパークの理念は以下のようにパンフレットに掲載されています。

ユネスコ世界ジオパークとは、国際的に地質学的意義のあるサイトや景観が、保護、教育、持続可能な開発で一体となった考え方により管理された、飛び地になっていない単一の地理的エリアです。ユネスコ世界ジオパークは、地球資源を持続的に利用したり、気候変動の影響を緩和したり、自然災害の影響を軽減するといった、社会が直面している重要課題への意識と理解を高めるため、その地域のあらゆる自然・文化遺産と関連した地質遺産を利用しています。歴史と現代社会の中で、地域の地質遺産の重要性について意識を高めることにより、ユネスコ世界ジオパークは地域住民に自分たちの地域に対する誇りを与え、地域と地域住民の一体感を強めます。地域の地質資源が保護される一方で、ジオツーリズムを通じて新たな収入源が生まれるので、革新的な地元企業や新しい雇用、質の高い研修コースの機会が活発に作り出されます。

日本語版印刷発行:日本ジオパークネットワーク 2020年7月1日発行より引用

ちなみに、日本でユネスコ世界ジオパークに認定されているのは以下の地域です。(2024年3月時点)

  • 洞爺湖有珠山ユネスコ世界ジオパーク(北海道)
  • アポイ岳ユネスコ世界ジオパーク(北海道)
  • 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク(新潟県)
  • 白山手取川ユネスコ世界ジオパーク(石川県)
  • 伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク(静岡県)
  • 隠岐ユネスコ世界ジオパーク(島根県)
  • 山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク(京都府、兵庫県、鳥取県)
  • 室戸ユネスコ世界ジオパーク(高知県)
  • 阿蘇ユネスコ世界ジオパーク(熊本県)
  • 島原半島ユネスコ世界ジオパーク(長崎県)

次に九州に日本ジオパークに認定されている九州のエリアは以下の地域です。(2024年3月時点)

  • おおいた姫島ジオパーク(大分県)
  • おおいた豊後大野ジオパーク(大分県)
  • 五島列島(下五島エリア)ジオパーク(長崎県)
  • 霧島ジオパーク(宮崎県、鹿児島県)
  • 桜島・錦江湾ジオパーク(鹿児島県)
  • 三島村・鬼界カルデラジオパーク(鹿児島県)

アウトドアや自然観察を楽しむにも魅力の多いエリアなので、是非機会があれば足を運んでみてください。

ジオパークのメリット

こうしたジオパークに登録することで、ジオパークのネットワーク間での意見交換などが実施され、様々な地域の取り組みや成功事例、問題や課題などが共有され、自然を守りながら有効活用していくための情報の行き来が増えたと教えてくださいます。
また、霧島ジオパークエリア内においても、インタープリテーションが行えるようになったガイドが増えたことや、体験プログラムの増加、ガイド団体も増え、新たな活動が生まれやすくなったと話してくださいました。

そうして関係各所と頻繁な意見交換を行いながら、自然を楽しむ方々を心底思いやり、自然や環境を大事にしながら地域や産業の発展に貢献したいと熱く活動されているのが、霧島ジオパーク推進連絡協議会の方々であり、図師さんなのであります。

今が楽しいだけでなく、未来も楽しめるように

“霧島ジオパーク推進連絡協議会とは”という基本的なことを丁寧に話してくださいつつ、色々な質問をしてもしっかりと応えてくださる図師さんですが、僕ら地域のアウトドアの店とも定期的な意見交換をしてくださって、安全管理やマナー問題などの共有もいつも行ってくださいます。また、霧島を歩いて楽しむお客様の声などをフィードバックする際なども、いつも真摯に受け止めてくださって対応してくださるので、やっぱり「この方がいるから、このエリアに通ってしまうんだよなぁ」と思ってしまう御方。皆様が自然を快適に楽しんで、美しい風景を堪能する裏には、こうした方々の活躍が存在します。

また、ユネスコ世界ジオパークではボトムアップアプローチとして、以下のような内容が掲載されています。

ユネスコ世界ジオパークは、地域コミュニティを力付け、地域の重要な地質プロセス・特徴・時代、地質に関連する歴史的テーマ、あるいは優れた地質の美しさを促進するという共通の目標を持って、密接なパートナーシップを発展させる機会を提供します。ユネスコ世界ジオパークは関係するあらゆる地方および地域の利害関係者と当該地における当局(例えば土地所有者、地域団体、観光事業者、先住民および地元の組織)を含めたボトムアッププロセスにより確率されます。このプロセスは地域社会の深い関わりや、長期的な公的・政治的支援が伴う地域の多様で強力なパートナーシップ、地域の地質遺産の展示および保護を行いながら、地域の全ての目標に合った包括的な戦略の開発が必要とされます。

日本語版印刷発行:日本ジオパークネットワーク 2020年7月1日発行より引用

図師さんと話しながら、僕ら店を営む事業者や自然を楽しむお客様、そして図師さん達のようなジオパークの担当の方々と一緒に、もっと良い未来に繋がる様になるといいなぁと思いつつ、そうした取組を進めるのもまた僕ら自身なのかなと思う時間でした。
最近では多くのお客様も、地域の発展や歓迎ムードの向上にと様々な取組に参加される方も増えましたが、僕らアウトドアを楽しむ者同士もより良い関係性と、地域への貢献ができれば嬉しいものです。

マナー・ルールを守って楽しみましょう

多くの方が自然を楽しむ一方で、マナーやルールの徹底が行えていないために、気づかずにマナーやルールを破ってしまうという例も近年では多く報告をいただきます。例えば霧島山系で言えば、火山活動中の山への立ち入りや、立ち入り禁止区間への侵入。またそうした活動を行ったものをルール違反だと気づかずに山のアプリにルートを掲載し、他の方が入るようになってしまった事例や、SNSに投稿して問題になってしまった事例も存在します。

面倒なことかもしれませんが、あらゆるアウトドアを楽しむのに正しいルールを知ることは大切なことです。霧島の山は国立公園であり、以下のマナーが存在します。

  • 登山道から外れない
    決められた登山道から外れて歩くと、まわりの草木を踏みつけ傷つけてしまいます。写真も登山道からとりましょう。
  • ゴミはもち帰ろう
    自分のゴミは自分の家まで持って帰りましょう。ゴミが落ちていたらすすんで拾いましょう。
  • トイレは登山口か携帯トイレで
    霧島の山中にはトイレはありませんので、登山口ですませておきましょう。携帯トイレをかばんにひとつ持ち歩くと便利で安心です。
  • 火の使用には気をつけて
    登山者の携帯用コンロやたばこから引火し、山火事が起きています。特に燃えやすいものの近くや風の強い場所での使用はひかえてください。たき火は禁止されています。
  • 植物や動物をとらない
    植物も動物も霧島の生態系をかたちづくる大切な一員です。野の花を採ったり踏みつけたりしないように気をつけ、いきものに優しくしましょう。植物や動物の採取・損傷は自然公園法で禁止されています。
  • シカにエサをあたえない
    霧島ではシカが多くなりすぎて、植物を食べ尽くしたり周辺の田畑を荒らしたりする被害が起きています。野生動物にはエサを与えるのではなく、そっと見守りましょう。
  • 外来生物を持ち込まない
    外来のいきものを持ち込むと、生態系に悪い影響をあたえます。例えばブラックバスやマングースなどは在来のいきものを食べてしまいます。特定外来生物の飼育、放逐、移動などは外来生物法で禁止されています。
  • ストック・アイゼンの使用について
    ストックやアイゼンは土の上で使用すると土を削って登山道を荒らしてしまいます。ストックにはなるべくキャップをつけて使用し、アイゼンは凍結時以外は使用しないでください。

詳しくはえびのエコミュージアムセンターのフィールドマナーに掲載されていますので、リンクを張っておきます。ハイキングを楽しむ際のルールについて分からない方は近くの専門店で確認しておきましょう。

マナーやルールを守り、他の方の迷惑にならないよう思いやりを大切に自然を守りながら楽しみましょう。(from PORTAL + 図師さん)

まだまだ書ききれないほど、霧島ジオパーク内の魅力を教えてくださる図師さんですが、今回はこの辺りで。また図師さんにも霧島ジオパークに関係する内容も折りを見て更新いたします。もっと霧島ジオパークについて知りたいという方は、霧島ジオパークのWEBサイトも参考になさってください。

図師さん、貴重な時間をありがとうございました。


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